

(公財)北区文化振興財団 事業係
[制作]A4 チラシ/A2ポスター
[刷色]フルカラー
[経緯]
北とぴあで開催予定の狂言公演のチラシ制作のご依頼。
北区文化振興財団様は、さまざまな日本の伝統芸能をテーマに公演を企画されている。
[コンセプト]
「狂言」という名称は聞いたことはあっても「落語」や「能」のように実態を知らないという人が結構多いのではないか。
リサーチ段階、過去の狂言関係のチラシ画像から受けた印象は「賑やかさ」「楽しさ」だった。
そしてその表現として「ゆるさ、軽さ」あるいは「敷居の低さ」などの特徴を捉えた。
今回YouTubeを通し、恥ずかしながら人生で初めて狂言を視聴した。
しかしながらりサーチ段階のイメージとの大きなギャップを感じてしまった。
軽い気持ちで、簡易的にさっと観れる印象を持ってしまっていた。
その印象付けは、ある意味、狙い通りだったのかもしれない。しかしどうしても違和感を覚えた。
実態はむしろ「奥深さ、賢さ、上品さ、文化度の高さ」に溢れ、発声や所作には紛れもなく伝統の「型」があり、
その力強さやエネルギーを前に、気軽に観るものではない、気軽な気持ちではついていけないという感覚しかなかった。
「ゆるさ、軽さ、敷居の低さ」というアプローチは「迎合」と紙一重で、人が求めるのは実はそこではないのかもしれない。
ややもすれば、無意識に落語や能よりも「下に見せて」しまうものではなかったか。
伝統芸能なのか何なのか「中途半端」な印象を与えてしまうものではなかったか。
いくら演劇やコントの延長として気軽に見て欲しいとしても、
コンテンツとしての「伝統芸能」は、あくまでも「伝統芸能」であり、人々の多くはそれを教養・文化として捉えるだろう。
だとすれば「中途半端」な狂言より、まずは落語や能を観ておこう、親なら子供に「本物」の落語や能を観せておこう、
という思考になるのではないだろうか・・・
これは真っ当な伝統芸能であるという雰囲気を出すため、画面は格調あるカッチリした方向性とし、
「楽しさ、賑やかさ」はフォントの表情、写真の扱いでカバーした。
「ゆるさ、軽さ、敷居の低さ」の路線ではなく、「力強さ、エネルギッシュ、王道」の印象を目指した。
狂言の写真は、客観的に印象が弱くインパクトに欠けがちである。そのため、
笑いを扱う伝統芸能という意味でも「笑」の文字を大きくアイキャッチとして中央に配置し、
「狂言」という言葉だけでは伝わらない主題を、「狂言」「笑」のセットで届けるように設計した。